トレーナーに栄養知識は必要? 選手に「何を食べればいい?」と聞かれる前に知っておきたいこと

トレーナーに栄養知識は必要? 選手に「何を食べればいい?」と聞かれる前に知っておきたいこと

試合前って、何を食べればいいですか?
筋肉をつけたいんですが、プロテインだけで足りますか?
トレーナーとして選手に関わるようになると、運動だけでなく食事について相談される場面があります。そのとき、感覚やネットで見た情報ではなく、根拠を持って答えられるでしょうか。そして、自分だけで答えてよい相談かどうかを判断できるでしょうか。
アメリカの大学スポーツ現場の調査では、十分な栄養知識があると判定されたコーチは35.9%。一方、ストレングス&コンディショニングコーチでは83.1%でした。なぜ、これほど差があるのでしょうか。そして、これからトレーナーを目指す人は、学生のうちに何を学んでおけばいいのでしょうか。

【この記事でわかること】
・職種によって、栄養知識が十分と判定された割合がどれくらい違うのか
・栄養知識の量だけでなく、「自分の専門範囲を判断すること」が重要だと論文が指摘していること
・運動と栄養の両面から選手を支えるために、在学中に学んでおけること

十分な栄養知識があるコーチは35.9%、S&Cコーチは83.1%でした

立場によって、大きな差がありました。

2012年に発表された調査(Torres-McGehee et al.)は、アメリカの大学スポーツの現場で、選手185人、コーチ131人、アスレティックトレーナー192人(ケガの予防・応急処置・リハビリを担う職種)、ストレングス&コンディショニングコーチ71人(筋力や体力づくりを専門に指導する職種)、合わせて579人に栄養知識のテストを行いました。基本的な栄養、サプリメントとパフォーマンス、体重管理、水分補給の4領域で、全体の得点が75%以上を「十分な栄養知識がある」と定義しています。

この基準に届いた人の割合は、次の通りでした。

・選手本人 : 9%

・コーチ : 35.9%

・アスレティックトレーナー : 71.4%

・ストレングス&コンディショニングコーチ : 83.1%

コーチとストレングス&コンディショニングコーチの間には、約47ポイントの差がありました。ただし、この調査だけから、なぜ差が生まれたのかまでは断定できません。

一方で論文は、選手と接する機会の多いスタッフへの栄養教育の重要性を指摘しています。これからトレーナーを目指す人にとって大切なのは、自分がどの職種になるかだけでなく、選手を支えるために必要な栄養知識を、どこで体系的に学ぶかという視点ではないでしょうか。

知らないことを知らないまま指導すると、見えにくくなるものがあります

問題は、栄養について知らないことそのものではありません。

自分が何を知っていて、何を知らないのかを把握しないまま指導してしまうことです。

2020年にハンガリーのフィットネストレーナーを対象に行われた研究(Kiss et al.)は、少人数の聞き取り調査(フォーカスグループインタビュー)とアンケートを組み合わせたもので、タイトルは「盲人が盲人を導く?(A Blind Man Leads a Blind Man?)」でした。論文が示した点は、次の通りです。

・規制が整っていないため、トレーナーの栄養に関する能力のばらつきが大きいこと

・多くのトレーナーが自分の栄養知識を客観的に把握できておらず、慢性疾患のあるクライアントへの栄養相談など、専門知識の範囲を超えた対応をする場合があること

・食事ガイドラインが、専門家のレベルでも専門知識に組み込まれていないこと

論文は、この状況を「場合によっては危険」とまで表現し、将来のトレーナーの専門的な資格水準を高めること、活動の専門的・倫理的な境界を明確にすることを提案しています。

自分がどこまで答えてよく、どこから栄養や医療の専門家につなぐべきなのか。その境界を判断できることも、選手を支えるうえで重要です。栄養を体系的に学ぶ意味は、答えられることを増やすだけでなく、自分だけで答えないほうがいいことを知ることにもあります。

成長期の選手にとって、栄養が重要なのはなぜでしょうか

関わる相手が中学生・高校生といった成長期の選手なら、栄養の重みはさらに増します。

2021年の総説(Desbrow)によると、13〜18歳の思春期は、体組成の変化、代謝やホルモンの変動、臓器系の成熟、栄養素の蓄えの確立が同時に進む時期で、将来の健康にも影響しうるとされています。食との生涯にわたる関係が形づくられる時期でもあります。

ケガとの関係も指摘されています。2024年の総説(Alcock et al.)は、急速な成長、特定競技への特化、高いトレーニング負荷が重なる時期に、若い選手は筋骨格系のケガをしやすいと整理し、適切な栄養が強く回復力のある組織づくりを支える可能性を示しています。この論文は、コーチ、アスレティックトレーナー、保護者、学校にも向けて書かれていました。

練習メニューだけでなく、食事を含めた成長を見る目が要る。栄養は「あれば強み」というより、選手の成長を支える土台に近いと、私たちは考えています。

運動と栄養の両面から選手を支えるために、何を学べばいいのでしょうか

大切なのは、栄養の情報をたくさん暗記することではありません。たとえば、次のようなことを考えられるようになることです。

・体脂肪を落とす、筋肉を増やすといった目的に合わせて、栄養素・摂取量・タイミングを考えられる

・競技やトレーニングに合わせて、エネルギーやたんぱく質の量、補食を組み立てられる

あわせて、自分が答えられる範囲と、専門家につなぐ範囲を判断する視点も、学生のうちから意識しておきたいところです。

こうした力は、SNSや動画で個別の知識を集めるだけでは、全体像や自分の専門範囲をつかみにくい部分があります。だからこそ、基礎から体系的に学ぶ機会を持つことが大切です。

その方法のひとつが、スポーツ・トレーナー系の専門学校のカリキュラムに取り入れられているスポーツ栄養実践アドバイザー®(PSNA) です。

スポーツ栄養実践アドバイザー®(PSNA)とは

一般社団法人 日本栄養コンシェルジュ協会が認定する資格で、スポーツやヘルスケアの現場で、栄養による体内のコンディショニングを実践できる知識と技術を有する者を認定します。内容は、次の3本柱です。

・ボディメイクのための栄養管理:体脂肪を落とし筋肉を増やす、戦略的な栄養サポートを学びます

・体組成のバランス:体脂肪と筋肉量のバランスを考えながら、目的に応じた体組成コントロールのための栄養素・摂取量・タイミングを、実践的に学びます

・スポーツパフォーマンスを支える栄養戦略:エネルギー設定、たんぱく質摂取量、補食の組み立てを体系的に学びます

特長は3つあります。

・授業の中で学べる : 栄養トレーナーコースでは、通年科目「栄養コンディショニング実践」の単位を取得すれば、卒業と同時にPSNAの取得につながります。資格のためだけに別の勉強をする必要がありません

・オンラインでも進められる : オンラインセミナーの受講、またはアーカイブ視聴で学べます

・現場での実践を見据えた内容 : スポーツやヘルスケアの現場で、栄養による体内のコンディショニングを実践することを目指した内容です

栄養トレーナーコース以外の学科・コースの学生も、任意で受講できます。オンラインセミナーの受講またはアーカイブ視聴(6時間)、レポート提出、認定試験(4択32問・1時間)という流れなので、普段の授業や実習と並行して進められます。費用は受講料5,500円と教材費15,180円で、合計20,680円(税込)です。

合格後には認定書も発行されます。

さらに栄養について深めたい方には、協会の上位資格「栄養コンシェルジュ」という道もあります。

まとめ

初めて担当する選手から、
「何を食べたらいいですか?」
と聞かれたとき。

ネットで見つけた情報ではなく、自分が学んだ根拠をもとに答えられる。そして、自分だけで答えるべきではない相談には、適切な専門家につなぐことができる。

運動と栄養の両面から選手を支えられるトレーナーになるための準備は、学生のうちから始められます。

→ スポーツ栄養実践アドバイザーについて詳しく見る<https://www.sanko.ac.jp/osaka-sports/course/trainer/nutrition.html>

参考論文

Toni M Torres-McGehee et al. J Athl Train. 2012;47(2):205-211. doi: 10.4085/1062-6050-47.2.205.
Sports nutrition knowledge among collegiate athletes, coaches, athletic trainers, and strength and conditioning specialists.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22488287/

Anna Kiss et al. Nutrients. 2020 Feb 29;12(3):663. doi: 10.3390/nu12030663.
A Blind Man Leads a Blind Man? Personalised Nutrition-Related Attitudes, Knowledge and Behaviours of Fitness Trainers in Hungary.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32121326/

Ben Desbrow. Sports Med. 2021 Sep 13;51(Suppl 1):3-12. doi: 10.1007/s40279-021-01534-6.
Youth Athlete Development and Nutrition.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34515968/

Rebekah Alcock et al. J Funct Morphol Kinesiol. 2024 Nov 5;9(4):221. doi: 10.3390/jfmk9040221.
Youth and Adolescent Athlete Musculoskeletal Health: Dietary and Nutritional Strategies to Optimise Injury Prevention and Support Recovery.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39584874/

 

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栄養や健康に関する最新情報をお届けするメディアサイトNutrigence®(ニュートリジェンス)スタッフです。

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