インフルエンザと栄養の関係とは?2026年の流行状況から考える免疫機能と食事の役割|栄養コンシェルジュ

インフルエンザと栄養の関係とは?2026年の流行状況から考える免疫機能と食事の役割|栄養コンシェルジュ

2026年10月9日、厚生労働省は全国のインフルエンザ定点当たり報告数が11.35人となり、今シーズン初めて注意報開始基準の10人を超えたことを公表しました。前年同期と比較すると約7.3倍に増加し、沖縄県では警報開始基準を超えています。

感染症の流行期には、手洗いや換気、ワクチン接種などの感染対策に加え、食事や栄養への関心も高まります。たんぱく質、ビタミンA・C・D、亜鉛などは免疫機能に関係する栄養素ですが、これらを多く摂取すればインフルエンザを予防できるというわけではありません。

栄養管理では、特定の食品や栄養素に注目するだけでなく、必要なエネルギー量、栄養状態、生活習慣を総合的に考えることが重要です。

では、栄養素は免疫機能にどのように関わり、感染症が流行する時期には、どのような食事を心がければよいのでしょうか。

インフルエンザと栄養の関係|免疫機能と食事・予防の科学的根拠

1.2026年のインフルエンザ流行状況と注意報の意味

厚生労働省が2026年10月9日に公表した感染症発生動向によると、9月28日から10月4日までの1週間に、全国の定点医療機関から42,320人のインフルエンザ患者が報告されました。

1医療機関当たりの報告数は11.35人となり、注意報開始基準の10人を超えています。前年同期の1.56人と比較すると約7.3倍で、前週からも増加しました。

都道府県別では、沖縄県が37.07人と警報開始基準の30人を超え、埼玉県19.66人、千葉県18.72人と続いています。また、全国937施設で休校・学年閉鎖・学級閉鎖などが報告されました。

ここでいう「定点当たり報告数」は、指定された医療機関から報告された患者数を医療機関数で割った値であり、全国の感染者総数を示すものではありません。

注意報や警報は地域の流行状況を把握するための指標です。基準を超えたことだけで個人の感染リスクが決まるわけではありませんが、身近な地域で感染対策を見直す一つの目安になります。

2.インフルエンザと免疫機能の基本的な関係

インフルエンザは、インフルエンザウイルスへの感染によって発症する呼吸器感染症です。感染後には発熱、頭痛、筋肉痛、倦怠感道の粘膜などによる物理的・化学的な防御です。さらに、病原体に幅広く反応する自然免疫と、特定の病原体に対して抗体や免疫記憶を形成する獲得免疫が協調して働きます。

こうした免疫機能には、免疫細胞の増殖や分化、細胞間の情報伝達、抗体の産生など、多くの生体反応が関わっています。

栄養素は、これらの反応を支える材料や調節因子として利用されています。

ただし、免疫反応は強ければよいというものではありません。過剰な炎症反応は身体の組織を傷つける場合もあるため、免疫機能が適切に調節されることが重要です。

3.免疫機能の維持に関わる栄養素

免疫機能には多くの栄養素が関係しています。代表的なものとして、たんぱく質、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンD、亜鉛などが挙げられます。

栄養素主な働き食品例

たんぱく質:抗体や免疫関連たんぱく質の材料になる肉、魚、卵、大豆製品、乳製品

ビタミンA:皮膚や粘膜の正常な機能、免疫機能に関与緑黄色野菜、卵、レバー

ビタミンC:抗酸化作用や免疫細胞の機能に関与ピーマン、ブロッコリー、キウイフルーツ

ビタミンD:自然免疫・獲得免疫の調節に関与魚類、きのこ類

亜鉛:免疫細胞の発達や機能、多くの酵素反応に関与牡蠣、肉類、魚介類

これらの栄養素は、それぞれ異なる役割を担っています。

例えば、たんぱく質は免疫に関わる分子の材料となり、亜鉛は免疫細胞の正常な働きを支えます。一方、ビタミンAは粘膜の維持に、ビタミンDは免疫応答の調節に関係しています。

そのため、特定の栄養素だけを重視するのではなく、必要な栄養素を幅広く摂取できる食生活を考えることが基本になります。

4.ビタミンC・ビタミンD・亜鉛は感染予防に有効なのか

免疫と栄養の関係を考える際には、栄養素の生理的な働きと、サプリメントなどを追加摂取した際の感染予防効果を区別する必要があります。

ビタミンCは免疫細胞の機能に関わりますが、一般集団を対象とした研究では、日常的なビタミンC補給によって普通感冒の発症頻度が明確に減少するとは示されていません。なお、普通感冒とインフルエンザは異なる疾患です。

ビタミンDについては、急性呼吸器感染症の予防効果を検討した研究が複数あります。しかし、対象者の栄養状態、投与量、投与方法、研究条件によって結果が異なり、すべての人に一律の予防効果が認められているわけではありません。

亜鉛も免疫機能に不可欠ですが、亜鉛サプリメントを摂取することでインフルエンザを確実に予防できるという根拠は確立していません。

栄養素が免疫機能に必要であることと、その栄養素を多く摂取することで感染症を防げることは、同じ意味ではありません。

5.栄養不足と過剰摂取をどう考えるか

栄養状態と免疫機能の関係を考えるうえで、栄養不足は重要な要因です。

エネルギーやたんぱく質の不足が続くと、身体の組織を維持するための材料やエネルギーが不足し、免疫機能にも影響する可能性があります。ビタミンやミネラルの欠乏も、正常な免疫応答を妨げる場合があります。

一方で、必要量を満たしている人が、さらに多くの栄養素を摂取すれば免疫機能が向上するとは限りません。

例えば、亜鉛の過剰摂取は銅の吸収を妨げ、銅欠乏などにつながる場合があります。また、脂溶性ビタミンの一部は過剰摂取による健康障害にも注意が必要です。

栄養管理では、不足と過剰の両方を考える必要があります。

日本人の食事摂取基準では、栄養素ごとに推定平均必要量、推奨量、目安量、耐容上限量などが設定されています。これらは目的や根拠が異なる指標であり、すべての栄養素について同じ基準が設けられているわけではありません。

6.感染症の流行期に意識したい食事の組み立て方

インフルエンザが流行しているからといって、特別な食事法に切り替える必要があるわけではありません。

まずは、年齢、体格、身体活動量、健康状態に応じたエネルギー摂取を確保し、さまざまな食品を組み合わせることが基本になります。

例えば、主食にご飯を選び、主菜として魚や卵、大豆製品などを取り入れ、副菜に野菜料理を組み合わせると、炭水化物、たんぱく質、ビタミン、ミネラルなどを摂取しやすくなります。

朝食を簡単に済ませる場合でも、おにぎりにゆで卵を添える、パンにチーズやヨーグルトを組み合わせるなど、身近な食品で食事内容を調整できます。

もちろん、毎食すべての栄養素を完璧にそろえる必要はありません。食事の回数や生活リズムに応じて、1日あるいは数日単位で食生活を見直すこともできます。

食事の目的は、インフルエンザを防ぐ特別な栄養素を探すことではなく、身体に必要な栄養を日常的に確保することです。

7.インフルエンザ発症時の食事と水分補給

インフルエンザを発症すると、発熱や倦怠感、食欲低下などによって、普段どおりの食事が難しくなることがあります。

発熱時には発汗などによって水分が失われる場合があるため、脱水に注意が必要です。

水分が飲める場合は、少量ずつでも継続して摂取し、食欲が戻ってきたら、体調に合わせて食事を再開していきます。

おかゆ、うどん、スープ、豆腐、卵料理などは、食欲が落ちているときにも選択肢となります。ただし、特定の食品にインフルエンザを治す作用があるわけではありません。

また、乳幼児や高齢者では脱水や全身状態の悪化に注意が必要です。水分が摂れない、尿量が著しく減る、呼吸が苦しい、意識の状態が普段と異なるなどの症状がある場合は、速やかに医療機関へ相談してください。

食事は療養中の身体を支える一つの手段であり、必要な医療を置き換えるものではありません。

8.ワクチン・手洗い・換気と栄養管理の役割

インフルエンザの感染対策では、栄養管理だけでなく、ウイルスへの曝露を減らす対策やワクチン接種も重要です。

厚生労働省は、手洗い、換気、十分な休養、バランスのとれた栄養摂取などを感染症対策として案内しています。また、インフルエンザワクチンには発病を一定程度抑え、重症化を防ぐ効果が期待されています。

それぞれの対策には異なる役割があります。

手洗いや換気などは病原体への曝露を減らすための対策です。ワクチン接種は、特定の病原体に対する免疫応答をあらかじめ準備することにつながります。

一方、栄養管理は身体の正常な機能を維持するための基盤です。

十分な栄養を摂取していてもインフルエンザに感染することはあり、感染したという事実だけで栄養状態を評価することもできません。

栄養管理の役割を理解しながら、感染対策を組み合わせることが求められます。

9.栄養情報を正しく読み解くための考え方

感染症が流行する時期には、免疫と食品に関するさまざまな情報が発信されます。

「ビタミンDが免疫に関わる」という説明と、「ビタミンDを摂取すればインフルエンザを予防できる」という説明では、示している内容が異なります。

前者は栄養素の生理的な働きについての説明ですが、後者は人間における感染予防効果についての主張です。

そのため、情報を確認する際には、栄養素の働きを調べた研究なのか、実際に感染症の発症を調べた研究なのかを区別する必要があります。

さらに、研究対象が動物なのか人間なのか、対象者に栄養不足があったのか、どの程度の量を摂取したのかによっても、結果の解釈は変わります。

栄養学の知識を身につけることは、食品の成分を覚えることだけではありません。

身体の中で栄養素がどのように利用されるのかを理解し、新しい情報を自分の生活や仕事にどう活かせるかを考えることにもつながります。

結論とまとめ

結論|インフルエンザと栄養の関係

2026年10月上旬、全国のインフルエンザ定点当たり報告数は11.35人となり、注意報開始基準を超えました。感染症の流行期には、日頃の栄養管理と基本的な感染対策をそれぞれの役割に応じて考える必要があります。

たんぱく質、ビタミンA・C・D、亜鉛などは、正常な免疫機能に関係する栄養素です。

特定の食品やサプリメントを多く摂取することで、インフルエンザを確実に予防できるわけではありません。

エネルギーや栄養素の不足を防ぎ、必要量に応じた食事を継続することが基本です。

ワクチン接種、手洗い、換気などの感染対策と、日頃の栄養管理は異なる役割を持っています。

感染症の流行をきっかけに食生活を見直す際には、食品の名前や栄養素の量だけでなく、身体の仕組みや生活環境も含めて考えてみてはいかがでしょうか。

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「ビタミンCは免疫機能に関係する」この知識を持っている方は多いかもしれません。

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参考文献・公的資料

【感染症の流行状況・公的情報】

厚生労働省.インフルエンザの発生状況について.2026年第40週(9月28日~10月4日).2026年10月9日公表.

厚生労働省.令和8年度 急性呼吸器感染症(ARI)総合対策に関するQ&A.

厚生労働省.インフルエンザ(総合ページ).

【栄養と免疫機能に関する文献】

Calder PC. Nutrition, immunity and COVID-19. BMJ Nutrition, Prevention & Health. 2020;3:74–92.

Carr AC, Maggini S. Vitamin C and Immune Function. Nutrients. 2017;9(11):1211.

Martineau AR, et al. Vitamin D supplementation to prevent acute respiratory tract infections: systematic review and meta-analysis of individual participant data. BMJ. 2017;356.

Hemilä H, Chalker E. Vitamin C for preventing and treating the common cold. Cochrane Database of Systematic Reviews. 2013;CD000980.

厚生労働省.日本人の食事摂取基準(2025年版).

【栄養コンシェルジュ®公式情報】

一般社団法人日本栄養コンシェルジュ協会.栄養コンシェルジュ®養成講座.

※本記事は2026年10月10日時点の情報をもとに作成しています。流行状況は週ごとに変化します。また、普通感冒や急性呼吸器感染症全般を対象とした研究結果を、インフルエンザ単独の予防効果として扱わないよう留意しています。

FAQ(よくあるご質問と回答)

Q1.インフルエンザと栄養状態にはどのような関係がありますか?

栄養状態は免疫機能を維持するうえで重要です。エネルギーやたんぱく質、ビタミン、ミネラルなどが不足すると、正常な免疫応答に影響する場合があります。ただし、栄養状態が良好であってもインフルエンザに感染することはあります。

Q2.インフルエンザ対策としてビタミンDを摂取する意味はありますか?

ビタミンDは免疫機能の調節に関係する栄養素です。一方、サプリメントによる急性呼吸器感染症の予防効果は研究条件によって異なり、すべての人への一律の効果は確立していません。摂取量は栄養状態に応じて考える必要があります。

Q3.免疫機能を維持するために、たんぱく質はなぜ必要ですか?

たんぱく質は、抗体や免疫関連たんぱく質を構成するアミノ酸の供給源です。摂取量が不足すると身体の正常な機能に影響する可能性があります。肉、魚、卵、大豆製品、乳製品などを食事に取り入れることができます。

Q4.インフルエンザ流行期にはサプリメントを飲んだ方がよいですか?

健康な人が感染予防を目的としてサプリメントを一律に追加する必要性は確立していません。栄養不足が疑われる場合には、食生活や健康状態を確認し、必要に応じて医師や管理栄養士などに相談することが適切です。

Q5.インフルエンザに感染したとき、食事で気をつけることは何ですか?

発熱や食欲低下がある場合は、水分補給と休養を優先し、食べられる範囲で食事を摂ります。おかゆやスープなども選択肢になりますが、食品そのものが感染を治療するわけではありません。脱水や症状の悪化には注意が必要です。

Q6.栄養コンシェルジュ®では、栄養素の働きをどのように学びますか?

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