
脳トレは認知症予防に本当に効果があるのでしょうか。
「脳トレで認知症リスクが25%低下」という報道を見て、希望を感じた方も多いかもしれません。実際、米国で行われたACTIVE研究では、特定の認知訓練を受けた高齢者において、認知症診断が少なかったという結果が報告されています。
しかし重要なのは、すべての脳トレが有効だったわけではないという点です。効果が示唆されたのは「分割的注意」と処理速度を鍛える訓練に限られていました。なぜその訓練だけが関連したのかを理解しなければ、「脳トレ=認知症予防」と単純化してしまう可能性があります。
さらに研究では、認知症予防はゲームだけで完結するものではなく、食事、運動、血圧管理、睡眠といった生活習慣全体が重要であることも強調されています。では、ACTIVE研究が示した事実は何か。そして、認知症予防において栄養はどこまで関与するのか。科学的根拠に基づいて整理します。
ACTIVE(Advanced Cognitive Training for Independent and Vital Elderly)は、1998年に米国で開始された大規模ランダム化比較試験です。平均年齢74歳の約2,800人を対象に、最大20年間追跡されました。
参加者は、
・記憶訓練群
・推論(問題解決)訓練群
・分割的注意+処理速度訓練群
・訓練なしの対照群
に分けられました。
その結果、分割的注意と処理速度を鍛える訓練を受け、さらに追加訓練も受けた群で、認知症診断が約25%少なかったと報告されています。
出典:Ball K et al., Alzheimer’s & Dementia: Translational Research & Clinical Interventions
分割的注意(divided attention)とは、複数の視覚情報を同時に処理する能力を指します。この訓練では、中心視野と周辺視野の情報を同時に認識し、素早く反応する課題が用いられました。
研究者は、こうした訓練が神経回路の可塑性や「認知予備能(cognitive reserve)」を高めた可能性を示唆しています。認知予備能とは、脳に老化や病変があっても機能を維持する能力のことです。
出典:Stern Y., Lancet Neurology 2012
研究者自身も、認知症予防は単一の方法で決まるものではないと強調しています。
・食事
・運動
・血圧管理
・睡眠
・社会的交流
これらが複合的に関与します。
特に食事パターンに関しては、地中海食やMIND食が認知症リスク低下と関連する可能性が報告されています。
出典:Morris MC et al., Alzheimer’s & Dementia 2015
神経伝達物質アセチルコリンは、記憶や注意に関与します。その前駆物質であるコリンは卵黄などに多く含まれています。
出典:Zeisel SH., Annual Review of Nutrition 2006
つまり、脳トレによる神経刺激と、それを支える栄養基盤は切り離せません。
・ACTIVE研究で分割的注意訓練群に認知症診断約25%減少
・すべての脳トレで同様の結果が出たわけではない
・認知症予防は生活習慣全体が重要
・栄養は神経伝達物質や認知予備能と関連
ニュースは希望を与えます。しかし専門家に求められるのは、
・研究デザインを理解する力
・関連と因果を区別する力
・単一要因で語らない姿勢
です。
栄養学の資格 栄養コンシェルジュでは、科学論文の読み方、エビデンスの評価方法、生活習慣全体を構造的に理解する力を体系的に学びます。
脳トレのニュースを、そのまま受け取る側から、解釈できる側へ。
それが、専門性の第一歩です。
Q1. 脳トレで本当に認知症は予防できますか?
ACTIVE研究では、特定の分割的注意訓練と認知症診断減少の関連が示唆されました。ただし、すべての脳トレに効果が確認されたわけではありません。
Q2. どんな脳トレが効果的ですか?
分割的注意と情報処理速度を鍛える訓練で関連が報告されています。一般的な記憶ゲームでは同様の結果は示されていません。
Q3. 認知症予防で最も重要なのは何ですか?
単一の方法ではなく、食事・運動・血圧管理・睡眠など生活習慣全体の管理が重要です。
Q4. 食事はどのくらい関係しますか?
地中海食やMIND食パターンが認知症リスク低下と関連する可能性が報告されています。栄養状態は神経伝達物質や脳機能に関与します。
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