
2026年1月15日、千葉県警松戸東署で勾留されていた20代男性が、ビタミン欠乏症「脚気(かっけ)」を発症した疑いがあると報じられました。
報道によれば、きっかけは勾留中の健康診断でした。男性は手足のしびれを訴え、むくみによって体重が増加。診察した医師は、身体症状に加え、揚げ物が多く野菜が少ない弁当内容を踏まえ、脚気の疑いがあると判断したと伝えられています。ビタミン剤の投与後、症状は回復。警察側は弁当業者へ栄養バランス改善を要望した一方で、「原因は断定できない」ともコメントしています。
この一連の報道は、脚気が現代日本でも起こり得る栄養問題であることを改めて示しました。
脚気は、ビタミンB1(チアミン)の欠乏によって起こる疾患です。
ビタミンB1は、水溶性ビタミンB群の一種で、
・糖質(グルコース)代謝
・エネルギー産生
・神経機能の維持
に深く関与しています。
具体的には、解糖系で生じるピルビン酸や、クエン酸回路(TCA回路)のα-ケトグルタル酸の代謝反応において、補酵素として不可欠な役割を果たします。
そのため、ビタミンB1が不足すると、
・全身倦怠感
・食欲不振
・末梢神経障害(しびれ)
・心不全やむくみ
といった症状が現れ、重症化すれば生命に関わることもあります。
脚気は歴史的に、白米中心の食事が原因で流行した疾患として知られています。
米のぬかや胚芽にはビタミンB1が多く含まれますが、精米によってそれらが除去されるため、白米のみの食生活では不足しやすくなります。
現代においては、
・揚げ物や精製穀類が多い
・野菜・豆類・海藻が少ない
・甘い飲料や菓子類の摂取が多い
・外食・弁当・加工食品への依存
といった食生活が重なることで、無自覚のビタミンB1欠乏が起こる可能性があります。
今回の事例も、特別な病気というより、栄養の偏りが続いた結果として理解できるケースといえるでしょう。
ビタミンは、mgやμg単位というごく微量で身体機能を支える有機化合物です。
エネルギー産生栄養素(糖質・脂質・たんぱく質)と異なり、体内でほとんど合成できないため、毎日の食事からの摂取が不可欠です。
特にビタミンB1は、
・米・パン・麺類など糖質摂取が多い人
・エネルギー代謝が活発なアスリート
・甘い飲料や菓子を頻繁に摂る人
では、必要量が増えるため注意が必要です。
ビタミンB1を補うには、以下の食品が有効です。
・玄米・胚芽米
・豚肉
・大豆製品
・ナッツ類
・ごま
・海苔
・緑黄色野菜
偏食がなく、多品目をバランスよく摂取していれば、ビタミンB1欠乏が起こることはまれです。
つまり脚気は、予防可能な栄養障害といえます。
今回の報道は、
・食事内容をどう評価するか
・症状と栄養をどう結びつけるか
・不足栄養素をどう推定するか
といった、栄養学の基礎的だが重要な視点を浮き彫りにしました。
単に「揚げ物が多い」「野菜が少ない」と言うだけでなく、なぜ問題なのかを説明できる力が、医療・教育・行政・健康支援の現場で求められています。
栄養学の知識は、知っているだけでは十分とは言えません。
・原理原則に基づいて説明できるか
・エビデンスを踏まえて判断できるか
・社会で起きている出来事を栄養で読み解けるか
こうした力が、これからの栄養専門職には求められます。
その一つの学びの選択肢として、栄養コンシェルジュのように「判断と説明」を重視した栄養資格が注目されています。
脚気は、過去の病気でも、特殊な環境だけで起こる疾患でもありません。
現代の食生活においても、条件が重なれば発症する可能性があります。
今回のニュースは、栄養を正しく理解し、評価し、説明する力の重要性を改めて私たちに示した事例といえるでしょう。
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