
社員食堂は、栄養士の実践力が最も問われる現場です。
SANKO E-1グランプリ社員食堂部門では、原価設定・20食限定提供・再現性といったリアルな条件のもと、学生たちが本気の献立提案に挑みました。
審査は、日本栄養コンシェルジュ協会の管理栄養士・廣瀬直樹 先生に加え、食品メーカーの現場を知る企業審査員とともに実施。
和食、フレンチ、インド、中華という多様な提案を、「社員食堂として本当に成立するか」という視点から評価しました。
本記事では、その審査を通して見えた実践栄養と、これからの栄養士に求められる力を振り返ります。
「社員食堂」と聞くと、
どんなイメージを思い浮かべるでしょうか。
毎日食べる、当たり前のごはん。
特別な演出はないけれど、仕事の合間に、静かに人の生活を支えている食事。
しかし実は、社員食堂ほど栄養士の実践力が問われる現場はありません。
原価、調理工程、提供スピード、提供数、継続性。
どれか一つでも欠ければ、どんなに栄養価が整っていても「仕事としての食事」にはなりません。
先日開催された学校法人三幸学園主催「SANKO E-1グランプリ」社員食堂部門では、非常に現場に近い条件が設定されていました。
それが、「社食のスペシャルメニューとして、20食限定で提供する」というものです。
イベント用の一皿ではありません。誰か一人に出す料理でもありません。
・実際の社員食堂で
・決められた原価の中で
・20食を安定して提供できるか
その再現性まで含めて、学生たちは献立を構想し、準備していました。
社員食堂部門には4チームが出場しました。
小田原短期大学からは、和と洋の融合した料理とインド料理。
辻学園栄養専門学校からは、フランス料理と中華料理。
「社員食堂で、このジャンルは難しいのでは?」そう感じる方もいるかもしれません。
しかし、学生たちは「この料理をどうすれば社員食堂として成立させられるか」という視点で、すべてを組み立てていました。
ジャンルありきではなく、利用する人の生活ありき。
その発想の転換こそが、実践栄養の出発点なのだと、あらためて感じさせられました。
特に印象的だったのは、5分間という限られた時間で行われたプレゼンテーションです。
・なぜこの献立にしたのか?
・どんな社員を想定しているのか?
・栄養、原価、再現性をどう両立させたのか?
それらを、自分たちの言葉で、論理的に、分かりやすく伝えていました。
「学生の発表」というより、現場で説明を受けている感覚に近い。
それほどまでに、“仕事としての栄養”が意識された内容だったと思います。
今回の審査は、
◆ 一般社団法人 日本栄養コンシェルジュ協会 管理栄養士でOriginal Nutrition株式会社 代表取締役 廣瀬直樹
◆ 日清医療食品株式会社 阿南道也 様
◆ ONODERA GROUP 奥村佳之 様
の3名で行いました。
栄養の仕事は、理想を語ることよりも、現実の中で成立させることの方が難しい。
原価がある。
時間がある。
人数が決まっている。
だからこそ、栄養士には「考え抜く力」が求められます。
今回、学生の皆さんが向き合っていたのは、派手な料理でも、評価されるための献立でもなく、誰かの毎日を支える食でした。
社員食堂というテーマは、その本質を、とても分かりやすく映し出してくれます。
栄養学の知識は、学べば身につきます。
しかし、その知識を「現場で使える形」に変える力は、経験と思考の積み重ねによって育まれます。
SANKO E-1グランプリ社員食堂部門は、その入口に立つ学生たちが、すでに“実践栄養”に足を踏み入れていることを強く感じさせる場でした。
ニュートリジェンスでは今後も、こうした教育現場や実践の取り組みを通して、「知っている栄養」から「使える栄養」へとつながる視点を発信していきます。
学生の皆様、お疲れ様でした!
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