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iPS細胞由来「心筋シート」とは?世界初の実用化を迎えたリハートの仕組み・対象・課題を解説|栄養コンシェルジュ

2026年9月29日、大阪けいさつ病院で、iPS細胞由来の心筋細胞シート「リハート」を用いた移植が行われました。リハートは、大阪大学発のクオリプス株式会社が開発した再生医療等製品で、標準治療で十分な効果が得られない虚血性心筋症による重症心不全が対象です。

厚生労働省は2026年3月6日、リハートを7年間の条件及び期限付きで承認しました。心筋細胞シート1枚は約3,300万個のiPS細胞由来心筋細胞から形成されています。

iPS細胞研究が始まって20年。研究段階だった技術は、どのように実際の医療へ到達したのでしょうか。

本記事では、リハートの対象、心筋細胞シートの仕組み、期待される作用、現在分かっていることと今後検証すべきことを整理します。さらに、細胞・血流・酸素・エネルギー代謝という視点から、このニュースを栄養学と結びつけて考えます。

iPS細胞の心筋シート「リハート」とは?仕組み・対象・効果を解説

1.iPS細胞由来心筋細胞シート「リハート」とは

「リハート」は、クオリプス株式会社が開発した再生医療等製品です。

一般的名称は「ヒト(同種)iPS細胞由来心筋細胞シート」。

厚生労働省は2026年3月6日、医薬品医療機器等法に基づく再生医療等製品として、リハートを条件及び期限付きで承認しました。承認期限は7年間です。

リハートは、iPS細胞そのものを患者の心臓へ移植する製品ではありません。

ヒトiPS細胞から心筋細胞へ分化誘導し、その心筋細胞をシート状に形成したものです。

PMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)の審査報告書によると、心筋細胞シートは1枚あたり3.3×10⁷個、約3,300万個の心筋細胞となるよう形成されています。

使用時には3枚の心筋細胞シートを心臓表面に順次移植します。

2026年9月29日には、大阪けいさつ病院において承認後第1例となる移植が行われたことがクオリプスから公表されました。

iPS細胞研究から生まれた技術が、研究や治験の段階を越えて、実際の医療として患者へ届けられる段階に入ったことになります。

2.リハートは、どのような心不全患者を対象としているのか

リハートについて理解するうえで重要なのは、「心不全であれば誰でも使用できる製品ではない」という点です。

厚生労働省による承認上の効能・効果又は性能は、「薬物治療や侵襲的治療を含む標準治療で効果不十分な、虚血性心筋症による重症心不全」です。

虚血性心筋症とは、冠動脈疾患などを背景として心筋への血液供給が障害され、心筋の収縮機能が低下した病態です。

心筋梗塞などによって心筋が大きく傷害されると、心臓が全身へ血液を送り出す能力が低下することがあります。

その結果、息切れ、運動能力の低下、むくみなどを生じ、重症化すると日常生活にも大きな影響を及ぼします。

リハートは、このような患者のうち、既存の標準的な治療を行っても十分な効果が得られない重症例を対象としています。

したがって、「新しい心不全治療が登場した」という理解だけでは十分ではありません。

どの病態を対象とし、既存治療の中でどのような位置づけにあるのかまで確認することが、医療情報を正確に理解するうえで重要です。

3.心筋細胞シートは心臓にどのように作用すると考えられているのか

「心筋細胞シートを心臓に貼る」と聞くと、移植した心筋細胞が傷んだ心筋と置き換わり、直接ポンプとして働く姿を想像するかもしれません。

しかし、期待されている作用はそれだけではありません。

iPS細胞由来心筋細胞シートの研究では、移植された細胞から分泌されるさまざまな因子による作用が検討されてきました。

こうした因子が周囲の心筋や血管などへ作用することで、心機能や心不全症状、運動耐容能などの改善につながることが期待されています。

クオリプスは、心筋細胞シートから分泌されるサイトカインなどの作用により、心機能改善が期待されると説明しています。

一方で、再生医療は「新しい細胞を入れれば、傷ついた臓器が完全に元通りになる」という単純な仕組みではありません。

細胞の生着、分泌される因子、血管形成、周囲組織との相互作用など、さまざまな要素が関係します。

そのため、作用機序についても研究が継続されています。

4.「条件及び期限付き承認」は何を意味するのか

リハートのニュースを理解するうえで、特に注意したいのが「承認」という言葉です。

リハートは2026年3月6日に承認されていますが、これは7年間の条件及び期限付き承認です。

PMDAは審査報告書において、標準治療で効果不十分な虚血性心筋症による重症心不全に対して一定の有効性は期待でき、安全性は許容可能と判断しています。

一方、現時点で得られている情報には限りがあります。

そのため、承認後にも使用症例から情報を収集し、有効性や安全性について継続的に評価することが求められています。

したがって、「承認された=有効性や安全性について、すべての検証が完了した」という意味ではありません。

また、「iPS細胞によって重症心不全が治ることが証明された」と表現することも適切ではありません。

患者へ届けられる医療になったことは大きな前進ですが、同時に、今後の実臨床データを慎重に評価していく必要があります。

科学的な情報を見るときには、成果だけでなく、現在のエビデンスがどこまで到達しているのかを確認する姿勢が重要です。

5.2006年のiPS細胞研究から2026年の実用化まで

iPS細胞の歴史を振り返ると、今回の出来事が約20年にわたる研究の積み重ねの上にあることが分かります。

2006年、京都大学の山中伸弥教授らは、マウスの線維芽細胞へOct3/4、Sox2、Klf4、c-Mycという4つの因子を導入し、多能性を持つ細胞を作製したことを『Cell』誌に報告しました。

2007年には、ヒトの皮膚細胞からもiPS細胞を作製したことを報告しています。

そして2012年、山中伸弥教授はジョン・ガードン博士とともにノーベル生理学・医学賞を受賞しました。

その後もiPS細胞を用いた疾患研究、創薬、再生医療の研究が進められ、心臓領域でも動物実験や臨床研究が積み重ねられてきました。

そして2026年3月、厚生労働省はiPS細胞を用いた再生医療等製品である「リハート」を条件及び期限付きで承認しました。

厚生労働大臣は同日の会見で、山中教授によるiPS細胞をもとにした日本発の治療製品が世界で初めて実用化されたと説明しています。

基礎研究の発表から約20年。

一つの研究成果が実際の医療へ到達するまでには、長期にわたる検証が必要であることを示す出来事でもあります。

6.心臓・血流・酸素とエネルギー代謝の関係

ここからは、このニュースを栄養学の視点から考えてみます。

心臓は、血液を全身へ送り出す臓器です。

血液によって運ばれるものには、肺から取り込まれた酸素だけでなく、消化管から吸収された栄養素も含まれます。

糖質は消化・吸収された後、主にグルコースとして血液中を運ばれます。

脂質も消化・吸収を経て運搬され、各組織で利用・貯蔵されます。

たんぱく質はアミノ酸などへ消化され、吸収後に体内でさまざまな物質の材料として利用されます。

しかし、「食べた」というだけで栄養素の役割が完結するわけではありません。

消化、吸収、運搬、細胞への取り込み、そして細胞内での代謝という過程を経て、初めて身体の中で利用されます。

さらに、細胞がATPを産生する過程では、酸素供給も重要な役割を担います。

食品、消化管、血液、心臓、組織、細胞、代謝は、それぞれ独立しているわけではありません。

栄養学を深く理解するためには、このつながりを見る必要があります。

7.再生医療のニュースから栄養学を考える意味

再生医療と栄養管理は、それぞれ目的も方法も異なります。

したがって、食事によってiPS細胞由来心筋細胞シートと同様の治療効果が得られる、という話ではありません。

それでも今回のニュースは、栄養を学ぶ人にとって重要な示唆を含んでいます。

それは、「食品を知るだけでは、栄養学を十分に理解できない」ということです。

例えば、「心臓に良い食品」という情報を目にしたとします。

そこで食品名だけを覚えるのか。

それとも、心臓はどのような組織で、どのようにエネルギーを得て、血液や酸素はどのように関係し、疾患によって何が変化するのかまで考えるのか。

両者では、栄養情報を読み解く力が大きく異なります。

栄養情報が大量に流通する現在、「何を食べればよいか」という答えだけを集めることには限界があります。

必要なのは、身体で何が起こっているのかを理解したうえで、食品や栄養素を考える力です。

医学や生命科学が進歩すれば、新しい情報はこれからも増え続けます。

だからこそ栄養学にも、知識を暗記するだけではなく、新しい情報を読み解くための基礎が求められます。

8.身体の仕組みから栄養を学ぶ「栄養コンシェルジュ®」

一般社団法人日本栄養コンシェルジュ協会が開講する「栄養コンシェルジュ®養成講座」では、食品や栄養素だけを切り離して覚えるのではなく、身体の仕組みと結びつけながら栄養学を学びます。

1ッ星コースでは、栄養素の働き、消化・吸収、エネルギー代謝などを基礎から学習します。

さらに、日本栄養コンシェルジュ協会が開発・普及する「食品カテゴリーマップ®」を用いて、食品を栄養学的な特徴から整理し、目的に応じて食品を選択するための考え方を身につけます。

2ッ星コースでは、細胞内代謝、肝臓や骨格筋などの働き、血液検査データの読み解き、個人に合わせた栄養プランニングへと学習を発展させます。

栄養コンシェルジュ®が重視しているのは、「この食品には何が入っているか」だけでなく、「食べたものが身体の中でどう使われるのか」を理解することです。

食品を見る。

身体を見る。

そして、その両方をつなげて考える。

そのために医学、生理学、生化学などの知見も取り入れながら、栄養学を体系的に学びます。

結論とまとめ

iPS細胞の実用化から見える「身体を理解する」重要性

2026年9月29日、iPS細胞由来心筋細胞シート「リハート」を用いた承認後第1例の移植が行われました。

リハートは、1枚あたり約3,300万個のiPS細胞由来心筋細胞から形成される再生医療等製品で、標準治療で効果不十分な虚血性心筋症による重症心不全を対象としています。

2026年3月6日に7年間の条件及び期限付きで承認されており、今後も有効性・安全性に関する情報の収集と評価が必要です。

2006年のiPS細胞作製の報告から約20年。今回の実用化は、基礎研究、前臨床研究、臨床研究、治験、承認審査など、多くの積み重ねによって実現したものです。

そして栄養学を学ぶうえでも、食品だけを見るのではなく、心臓、血液、酸素、細胞、エネルギー代謝といった「身体の仕組み」を理解することが重要です。

栄養学を「覚える」から「使える」へ

医学も、生命科学も、栄養学も進歩を続けています。

今日の常識が、10年後、20年後にもそのままとは限りません。

だからこそ、栄養を学ぶときに必要なのは、情報をたくさん覚えることだけではありません。

新しい研究に出会ったとき、

「なぜ、そうなるのか?」

「身体のどこで起きているのか?」

「この情報は、どこまで分かっているのか?」

「目の前の人には、どのように考えればよいのか?」

と、自分で考えられる土台をつくることです。

栄養コンシェルジュ®では、消化・吸収からエネルギー代謝、細胞内代謝、臓器の働きまで、身体の仕組みと食品をつなげながら栄養学を学びます。

私たちが目指しているのは、栄養を“暗記”ではなく“選択”へ。

そして、食べ物に善悪をつけるのではなく、身体の状態や目的に合わせて食品を選べるようになること。

管理栄養士・栄養士として専門性をさらに広げたい方。

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そして、ご自身やご家族の健康のために栄養学を体系的に学びたい方。

栄養情報を「知っている」から、根拠を理解して「使える」へ。

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参考文献・公的資料

1.厚生労働省.「承認された再生医療等製品について」令和8年3月6日.

2.厚生労働省.上野厚生労働大臣会見概要「iPS細胞製品の承認について」令和8年3月6日.

3.独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA).「リハート 審査報告書」令和8年2月10日.

4.クオリプス株式会社.「再生医療等製品『リハート』第1例目の移植実施に関して」2026年9月29日.

5.京都大学iPS細胞研究所(CiRA).「iPS細胞とは?」.

6.Takahashi K, Yamanaka S. Induction of pluripotent stem cells from mouse embryonic and adult fibroblast cultures by defined factors. Cell. 2006;126(4):663-676.

7.Takahashi K, et al. Induction of pluripotent stem cells from adult human fibroblasts by defined factors. Cell. 2007;131(5):861-872.

8.Kawamura M, et al. Feasibility, safety, and therapeutic efficacy of human induced pluripotent stem cell-derived cardiomyocyte sheets in a porcine ischemic cardiomyopathy model. Circulation. 2012;126.

9.Kashiyama N, et al. MHC-mismatched allotransplantation of induced pluripotent stem cell-derived cardiomyocyte sheets to improve cardiac function in a primate ischemic cardiomyopathy model. Transplantation. 2019;103(8):1582-1590.

10.Miyagawa S, et al. Case report: Transplantation of human induced pluripotent stem cell-derived cardiomyocyte patches for ischemic cardiomyopathy. Frontiers in Cardiovascular Medicine. 2022;9:950829.

※本記事は2026年9月30日時点で公開されている厚生労働省、PMDA、京都大学iPS細胞研究所、開発企業の公式情報および査読済み論文をもとに作成しています。リハートは条件及び期限付き承認を受けた再生医療等製品であり、今後の製造販売後調査や研究によって有効性・安全性に関する情報が更新される可能性があります。

FAQ(よくあるご質問と回答)

Q1.心筋細胞シート「リハート」とは何ですか?

リハートは、ヒトiPS細胞から分化させた心筋細胞をシート状に加工した再生医療等製品です。1枚約3,300万個の心筋細胞から形成され、重症心不全患者の心臓表面へ移植して使用します。

Q2.リハートはどのような心不全に使用されますか?

薬物治療や侵襲的治療などの標準治療で十分な効果が得られない「虚血性心筋症による重症心不全」が対象です。すべての心不全患者に使用される治療ではありません。

Q3.心筋細胞シートは、どのように心臓へ作用しますか?

iPS細胞由来心筋細胞から分泌されるサイトカインなどが周囲の組織へ作用し、心機能や心不全症状、運動耐容能などの改善につながることが期待されています。

Q4.リハートは心不全を治すことが証明された治療ですか?

現時点で「心不全を治す」と断定することはできません。リハートは7年間の条件及び期限付きで承認されており、承認後も症例データを収集して有効性と安全性を評価します。

Q5.iPS細胞の研究開始から実用化まで何年かかりましたか?

山中伸弥教授らがマウスiPS細胞を報告したのは2006年です。リハートは2026年に承認され、同年9月に承認後第1例が移植されました。約20年間にわたる研究の積み重ねがあります。

Q6.栄養コンシェルジュ®はどのような資格ですか?

一般社団法人日本栄養コンシェルジュ協会が認定する民間資格です。栄養素だけでなく、消化・吸収やエネルギー代謝など身体の仕組みを学び、目的に応じた食品選択へつなげます。

Q7.栄養コンシェルジュ®と管理栄養士・栄養士は何が違いますか?

管理栄養士・栄養士は法律に基づく資格ですが、栄養コンシェルジュ®は民間資格です。国家資格の代替ではなく、身体と食品を結びつけて栄養を実践的に学ぶ教育プログラムです。

Q8.栄養コンシェルジュ®ならではの特徴は何ですか?

消化・吸収や代謝など身体の仕組みと食品を結びつけて学び、独自の「食品カテゴリーマップ®」を活用して、身体の状態や目的に合わせた食品選択を考える点が特徴です。

Q9.管理栄養士が栄養コンシェルジュ®を学ぶメリットはありますか?

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Q10.栄養コンシェルジュ®は資格がない人でも学べますか?

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