- 生活習慣病
食道がんを内視鏡で切除した患者を10年以上追跡した京都大学などの研究で、「禁酒・禁煙」を完全に実践した場合、新たな食道がん発生リスクが約5分の1に低下したと報告されました。一方で、飲酒量を“減らすだけ”では有意なリスク低減は認められませんでした。アルコールは国際がん研究機関(IARC)でグループ1(ヒトに対して発がん性あり)に分類されています。
本記事では、研究内容の整理、アルコールと食道がんの関係、各種酒類の栄養成分、厚生労働省が示す節度ある飲酒量を科学的に解説します。ニュースを感情ではなく、データで読み解きます。
対象:食道がんを内視鏡切除した患者330人
追跡期間:10年以上
介入:禁酒・禁煙指導
結果:
✔ 完全禁酒+禁煙群で新規食道がん発生リスクが約5分の1
✔ 飲酒量を減らすのみでは有意差なし
※観察研究であり、因果関係を断定するものではありません。
アルコール摂取後、体内で生成されるアセトアルデヒドは発がん性物質とされています。
国際がん研究機関(IARC)はアルコール飲料をグループ1(発がん性あり)に分類。
日本人ではALDH2遺伝子多型により、アセトアルデヒドの分解能力に個人差があります。
アセトアルデヒドは、アルコール(エタノール)が体内で分解される過程で生じる中間代謝産物です。
飲酒後、肝臓でアルコール脱水素酵素(ADH)によってエタノールがアセトアルデヒドに変換され、その後アルデヒド脱水素酵素(ALDH2)によって酢酸へと分解されます。問題となるのは、このアセトアルデヒドが発がん性物質である点です。
国際がん研究機関(IARC)は、アルコール摂取に伴い体内で生成されるアセトアルデヒドを「ヒトに対して発がん性がある(グループ1)」に分類しています。
日本人ではALDH2活性が弱い人が一定割合存在し、アセトアルデヒドが分解されにくく体内に蓄積しやすいことが知られています。
(日本食品標準成分表2020年版 八訂)
ビール(淡色・100g)
エネルギー:40kcal
炭水化物:3.1g
日本酒(純米酒・100g)
エネルギー:103kcal
炭水化物:3.6g
赤ワイン(100g)
エネルギー:68kcal
炭水化物:1.5g
焼酎(25度・100g)
エネルギー:146kcal
炭水化物:0g
アルコール自体は1gあたり7kcal。栄養素はほぼ含まず、エネルギー源として作用します。
厚生労働省「健康日本21」では、純アルコール20g/日程度を節度ある飲酒と定義。
目安:
・ビール500ml
・日本酒180ml
・ワイン200ml
・焼酎100ml(25度)
ただし、がん既往歴のある人においては個別判断が必要です。
今回の研究では「完全中止」のみで有意差。
考えられる要因:
・累積曝露量
・慢性炎症
・粘膜障害
・アセトアルデヒド持続暴露
量依存性の可能性はありますが、今回のデータでは「減酒のみ」では効果は示されませんでした。
■ 禁酒・禁煙で食道がん再発リスクは約5分の1に低下
■ 減酒のみでは有意なリスク低減は認められなかった
■ アルコールはIARCグループ1(発がん性あり)
■ アルコールは1gあたり7kcal
■ 厚労省は純アルコール20g/日を節度ある飲酒と定義
アルコールのニュースを見て、「やっぱり危険なんだ」で終わるか、「研究デザインは?観察研究?対象は?公的指針との関係は?」
と整理できるか。
その差が専門性です。
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引用・参考文献
京都大学医学部附属病院 消化管外科関連研究発表資料(食道がん内視鏡切除後の禁酒・禁煙に関する長期追跡研究報道資料)
※正式な査読論文情報は報道時点では未確認。学会・論文掲載後は更新推奨。
International Agency for Research on Cancer (IARC). Personal consumption of alcoholic beverages. IARC Monographs on the Evaluation of Carcinogenic Risks to Humans. Volume 100E. 2012.
Secretan B, et al. A review of human carcinogens—Part E: Tobacco, areca nut, alcohol, coal smoke, and salted fish. Lancet Oncology. 2009;10(11):1033–1034.
文部科学省 日本食品標準成分表2020年版(八訂)2020.
厚生労働省 健康日本21(第二次)(節度ある飲酒:純アルコール20g/日)
Yokoyama A, et al. Alcohol flushing, alcohol and aldehyde dehydrogenase genotypes, and risk for esophageal squamous cell carcinoma in Japanese men. Cancer Epidemiology Biomarkers & Prevention. 2003.
Q1 禁酒すればがんは防げますか?
発生リスク低下と関連する研究はありますが、因果関係の断定はできません。
Q2 少量なら安全ですか?
節度ある飲酒量は示されていますが、発がんリスクはゼロではありません。
Q3 アルコールのカロリーは高いですか?
1gあたり7kcalで、脂質(9kcal)に次いで高エネルギーです。
Q4 ワインのポリフェノールは体に良い?
研究はありますが、飲酒によるリスクと分けて評価する必要があります。
Q5 禁煙と禁酒、どちらが重要?
本研究では両方を完全にやめた群でリスク低減が示されました。